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ブリキ缶建造記

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主に1/700艦船模型の制作記録

■船体舷側の細部工作

船体部品の基本整形と表面処理が済んだところで、舷側に付着する艤装品を追加工作していきます。
舷窓と排水管の開口、舷外電路、主錨、繋船桁、プロペラガードなどです。
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主錨は、レインボーモデルのエッチング部品を船体に直に接着しました。このエッチングパーツは表裏重ね合わせて使用する設計ですが、片面のみ使用することで、「アンカーレセスに半分埋もれた感じ」が出ないだろうか、と思いまして。まあ、アンカーレセスをきちんと掘り直すのが面倒だったのが本当の理由です。

舷外電路に使用した素材は、タミヤ製0.14mm厚プラペーパーを、0.2mm幅程度に細く裁断したものです。
画像に写っている部材は長さ30mm位。これを10mm以下に短く切断してから、船体の該当箇所に貼り付けています。
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舷外電路の経路は、「高波」が浦賀船渠で建造されたことから、同じく浦賀船渠建造艦の同型艦「風雲」の竣工時写真(Wikipediaで閲覧できます)を参考にしました。
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艦尾側の舷外電路は、繋船桁とプロペラガードをかわして舷窓の下を通る経路が、浦賀船渠建造艦の特徴です。他の造船所で建造された同型艦には、舷窓の上を通る経路の違いが見られますが、これを模型で再現するとかなり窮屈な感じです。
舷窓は0.4mm径のドリルで掘っています。0.5mm径にした場合、バランスが悪くなりそうです。
制作当初、「陽炎」型と「夕雲」型初期建造艦は舷窓の配置と数が全く同じだろう、と思い込んでおりましたが、残されている実艦写真を比較して検討してみた結果、ごくわずかに異なるようです。

艦種を問わず、船体舷側下部には舷窓以外に各種排水口の小さな穴がいくつか点在しています。1/700の模型ではあまり見向きもされず、省略されることが多い部分です。しかし、「陽炎」型や「夕雲」型駆逐艦の写真を眺めてみますと、艦橋直下右舷側、下甲板レベルの数箇所に排水口らしい穴が目立って確認できます。模型でも0.2mm径のドリルでいくつか掘ってみました。
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森恒英著『軍艦メカニズム図鑑 日本の駆逐艦』56頁に、“自動海水補填装置の構造”と“同設置場所”のイラストが掲載されており、その図中に「余分海水溢出管」というものが描かれていました。構造図の位置関係から考えて恐らくこの排水管口だろう、と勝手ながら推測した次第です。


作業工程の説明が前後してしまいました。
今回、船体舷側外板のつなぎ目を凹線で再現するために、今年発売されたばかりのGSIクレオス製「Mr.ハルモールドチゼル」を使用してみました。
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使い方はいたって簡単。水平な台上で船体部品を押さえながら、刃先を部品に当てて左右に移動させるだけ。モールドを彫る作業自体は極めて早く済ませられます。
ただし、事前準備として刃先の高さ調整や、船体部品の反り防止対策と表面処理は入念に行う必要があり、そちらのほうで時間がかかります。
刃先の上下高さは、中央の黒いつまみを回して調整します。内部にスプリングが仕込まれており、微調整が可能。しかし、上下可動範囲はあまり広くありません。1/700洋上模型でも船体乾舷の低い艦種(巡洋艦、駆逐艦など)向けの製品でしょう。比較的乾舷の高い客船や貨物船、それらを元にした改造空母などには不向きかもしれません。戦艦の乾舷高さで上限のような感じです。
船体部品以外に、煙突部品のジャッキステー位置に水平に凹線を彫る用途にも使えそうです。まだ試しておりませんけれども。
模型用工具としては、メーカー希望小売価格4,000円(税抜き)という設定は少々高い印象があります。ピンポイントで役立つ工具ですし、高品質な製品なのは確かなのですけど、これが3,000円以下でしたら、手に取って使ってみよう、という方が更に増えると思います。

……などと書きながら、少々気になりましたのでア○ゾンの該当商品頁を閲覧してみたら、現在2千円台半ばで安く販売されているではないですか……(涙目)。
# by minekaze1920 | 2016-05-22 17:17 | 高波1942
■はじめに

昨年から模型制作の方針について迷走していた感じがあり、このブログを継続していくか否かもしばらく悩んでおりました。
どうも模型制作ブログ記事としての体裁に気をとられ、何か読者にとって有用なことを書かねばならない、という強迫観念にとらわれていたようです。本来、自分のための備忘録としての意味が強かったこのブログ(モデラーとの交流目的ではないので、相互リンクは開設当初から行わなかった)ですので、自分の書きたいことを書いたほうが健康的ですよね。色々と難しく考え過ぎていたのではないだろうか、と反省し、ここで仕切り直して、新しいキットを制作することにしました。
制作中断しているお手付きのキットが多数ありますが、「作りたいものを作りたい時に作る」、これが私の基本ですので、何卒ご容赦願います。

ということで、夕雲型駆逐艦6番艦の「高波」を制作開始しました。使用するキットは、ピットロードの新装備セット付属の限定商品。
実は夕雲型駆逐艦のキットを今まで制作したことがありませんので、良い頃合いです。
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実艦の「高波」については、短い艦歴でありながら、ルンガ沖夜戦の立役者(被害担当艦?)とされており、戦史研究者の間では知名度の高い駆逐艦だろうと思います。
模型制作者としては、「高波」の艦容を示す写真や公式図面が一切残されていないため、作りにくいと思われる艦です。しかし、同型艦の資料から類推・妄想しながら好きに制作できるという点では、気楽に楽しめるともいえます。注意すべき点は、艦隊に編入後の煙突識別線(白線)くらいでしょう。


■船体の基本工作

夕雲型駆逐艦の模型を制作する際に問題となるのが、要目欄の全長表記のゆらぎ。
資料によって違いがあり、【全長119.0m、または119.03m、もしくは119.3m】となっています。「陽炎」型と比べて50cm艦尾を延長したか、80cm延長したのか、気になるところです。ちなみに「陽炎」型の全長は118.5m、水線長(公試状態)が116.2mとされています。
個人的には、80cm艦尾延長説を採りたいと思います。その根拠は? と問われると返答に窮してしまいますが……。

「高波」のキットに同梱されていた塗装指示図には、全長119.0mと記載されています。
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元となる「夕雲」のキットは現在から20年以上前の、1994年に開発されたものですから、古い文献資料を参考に踏襲したものと思われます。

ピットロードの「夕雲」型キットは、同社「陽炎」型キットと艦橋構造物以外の部品がほぼ同じで、部分的に金型を変更して差別化を図っています。船体部品に関しては、全長は「陽炎」型と同じようです。一番砲基部の位置はきちんと変更されており、その周囲に金型のコマ替えに伴う段差がわずかに確認できました。
船体部品断面が抜き勾配による下窄まり形状ですので、いずれにしましても、艦尾の延長工作は必要になります。1/700で1mm弱か1mm強か、とても微妙なところですが。
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実艦らしい船体形状にこだわる場合、船体全周にわたってパテ盛り修整が必要になってきます。それをする位でしたらアオシマ製「陽炎」型キットの船体をベースにしたほうが早いでしょう(笑)。今回は艦尾付近のパテ盛りのみで済ませました。まず芯となる部分に薄いプラ板を接着してから、光硬化パテを盛っています。光硬化パテは柔らかいため、艦尾ナックルラインの鋭いエッジが出せなかったのが反省点です。

以前からピットロード製駆逐艦キットの部品を眺めて思うところがあって、「艦首形状がなんだかもっさりしている……」という印象でしたが、このキットもそのような感じでした。ただ、同型艦の実艦写真やアオシマの「陽炎」型キットを参考に、舳先の形状に注意しながら削れば、それなりに良い雰囲気になると思います。
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上記した一番砲基部の位置について、「陽炎」型のキットと並べて一目瞭然ですけれども、ピットロード製「夕雲」型のキットは位置を艦尾よりにずらして成型されています。
ピットロード製品同士で比較するのが筋というものですが、同社の「陽炎」型キットを所持していなかったので、ご了承ください。確認のため、今度購入しておこう……。
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季刊『艦船模型スペシャル No.54』の特集が「鼠輸送作戦とルンガ沖夜戦」で、夕雲型駆逐艦の模型制作記事が掲載されています。「高波」の作例もありますので、参考として読み直しているところです。
記事文中、「1番砲塔の位置と艦橋の前後の長さが陽炎型になってしまっている」とあり、「えっ、そうだったの?」と気になりましたので、確認の意味で比較してみた次第です。艦橋前後の長さについては、今後予定の【艦橋の工作編】で述べようと考えています。
# by minekaze1920 | 2016-05-08 15:24 | 高波1942

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