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ブリキ缶建造記

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主に1/700艦船模型の制作記録

第39号掃海艇1945 その三

前回更新より約二ヶ月間、放置しておりました。
いろいろありまして、模型制作の進捗は芳しくない状況です。

■艦橋構造物の工作

キットの部品をなるべく使用しつつ、省略された部分を追加再現しています。
正確な形状と、スケールに見合ったらしさにこだわる場合、艦橋天蓋や床板など、全てを薄いプラ板や金属板で自作したほうがより良く面倒も少ないと思います。
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艦橋前面に追加した防弾板は、プラペーパーにけがき針で均等に筋目を付けて折り曲げ、リベット表現を施しておきました。それらしく見えるでしょうか?
戦時中の駆逐艦写真を参考にして、推測ながら逆探も接着しています。
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■“ファンネルキャップ”とは?

前回の記事で思案中だった、煙突の「雨除け格子」の再現について。
レインボーモデル製のエッチングパーツ(品番Rb7034)が入手できましたので、難なく再現可能となりました。掃海艇に使うには部品そのままでは合いませんから、形状に合うものを選んで小さくカットして接着しています。
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エッチングパーツの品名には、"IJN Funnel Hood"とあります。以前からこの部分を指して、「ファンネルキャップ」と呼ぶ方が多いように見受けられます。実は私も以前はそう呼んでおりました(苦笑)。
試しに、「艦船模型 煙突の製作 ファンネルキャップ」などのキーワードを入力してWeb検索してみますと、そちらのほうの意味合いで用いている方が結構おられることがわかります。逆に、「雨覆管」や「雨除け格子」という呼称を使っている艦船モデラーは少数派のような……。まあ、専門用語的で、一般的に用いられる呼称とは言い難いですけれども。


ちょっと気になりましたので、手元にある書籍でわかる範囲内で調べてみました。海外艦に関しては不勉強のため詳細は何ともいえません。


結論からいいますと、日本海軍艦艇でいう煙突の「ファンネルキャップ」とは、煙突頂部に存在する放射状または同心円状の細い骨組部材を指すものではない、ということです。

煙突は内筒と外筒の二重構造のつくりになっています。その外筒の頂部を覆っている部材を指して、「キャップ(恐らくファンネルキャップの意)」と呼称するようです。(※1)
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模型ではエッチングパーツや細い金属線で再現されることの多い、傘の骨のような細い部材は、「雨覆管」または「雨除け格子」と呼ばれるものです。(※2)
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また、およそ3年前に当ブログで紹介した書籍にも、この点について適切に言及されておりましたので、ここで一部引用させて頂きます。

 “雨よけのため未使用時の煙突頂部にはカバーをかけておくが、傘の骨に相当する金枠は日本艦の模型では特に重視される傾向にある。これをファンネルキャップと称する例を時々見るが、本来ファンネルキャップとは排煙の向きを調節するためのフードを示す用語で無関係。”(※3)

引用文中、“排煙の向きを調節するためのフード”というのは、戦前の戦艦に設置されたものを具体的にイメージしてしまいますね。


以下は、私の勝手な憶測を交えた駄文です。

ウォーターラインシリーズをはじめとした、1/700艦船プラモデルの煙突部品は、左右分割で先端フード部品を上にかぶせて付ける、3部品構成の設計がほとんどだろうと思います。
最近では、先端部品の格子のモールドが実艦のように抜けている製品が当然のようになり、部品分割も複雑化しつつあります。ひと昔前のキットでは、煙突先端部品がプラの無垢状態か、凸状に格子モールドを再現したものが多かったと記憶しています。

「煙突先端部品そのもの全体」を指して、「ファンネルキャップ」と呼んでいたか、あるいは「煙突フード部品」など、人によって呼び名が様々だったかもしれませんけれども、煙突頂部の格子部分のみを指して、「雨除け格子」「雨覆管」と使い分けていた、ベテランモデラーの諸氏も当然おられたでしょう。名前が指し示すイメージと、該当する箇所が近接しているため、情報の受け手側ではとても紛らわしく感じられたのではないか、と想像します。

模型制作の定番資料とされている潮書房光人社の図解シリーズでは、「ファンネルキャップ」について実艦写真を用いて説明されています。しかしながら、写真ごとに矢印の指し示す位置が曖昧で微妙に異なっています。(※4)
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模型を俯瞰で眺めた際に目立つ煙突の「雨除け格子」の箇所を細密に工作する模型制作者が次第に増えていくなかで、いつのまにか「ファンネルキャップ」という呼称が拡大解釈され、勘違いしてしまうモデラーがどんどん増えてしまった、というのが現状ではないでしょうか。

軍事分野の専門家ではない模型制作者の多くは、制作対象物に関する細かい専門用語や呼称に対して、おおらかな傾向があると個人的に思います。私も実際そうですから……。
もちろん、対象物をより良く知るために資料をそれなりに検証したりしますが、軍事書類上では正しい、堅苦しい公式用語よりも、より一般的に易しく言い換えられた用語を好むといいましょうか。

私は趣味で模型制作過程を記したこのブログを書くようになってから、艦船独特の言い回しや用語のゆらぎに多少気を遣うようになりました。それまではろくに調べもせず(めぼしい資料が手元に無かった)、結構いい加減に書いていました。現在でも勘違いや思い込みがあるでしょう(恐ろしく後になってから気付く!)。全く不勉強を恥じるのみです。

長文乱文失礼しました。今まで「雨覆管」「雨除け格子」の部分を指して、「ファンネルキャップ」と勘違いされていた方がおられましたら、老婆心ながら今後気を付けていただきますと、幸いであります。


※引用参考文献

 1) グランプリ出版 森恒英著 『軍艦メカニズム図鑑 日本の駆逐艦』 151頁
 2) グランプリ出版 森恒英著 『軍艦メカニズム図鑑 日本の駆逐艦』 152頁
 3) 大日本絵画 岩重多四郎著 『日本海軍小艦艇ビジュアルガイド 駆逐艦編』 8頁
 4) 潮書房光人社 雑誌「丸」編集部編 『図解 日本の重巡』(1999年発行版) 94~95頁
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by minekaze1920 | 2015-06-14 17:40 | 第39号掃海艇1945(中断)