■煙突の工作・塗装
煙突本体は基本的にキットの部品を使用していますが、画像のように一部ディテールを追加しています。
元々キットで省略されていて、ディテールアップする際に見落としがちなのが、煙突上部前方のみに付いているジャッキステーです。これは「陽炎」型にもあります。
実艦写真で明瞭に判別できる例として、昭和17年9月の「不知火」や、昭和18年4月の「巻波」の舞鶴工廠入渠中写真があります。
参考として掲載したのは、「不知火」の写真。二番煙突付近をトリミングしたもの。
このような写真を眺めてみると、煙突のジャッキステーがとても細い円材で出来ていることや、煙突開口部にある骨組みがなぜ「雨除け格子」と呼ばれているか、理解できると思います。
警笛管(汽笛用蒸気管)は、残された同型艦の写真ではいくつかの経路の違いがみられ、姉妹艦識別のポイントとなる部分です。模型では同型艦の写真とは異なる経路としてアレンジしました。
煙突を取付けた後、四連装魚雷発射管や機銃台座部品などを順に取付けました。魚雷発射管はキットに同梱されていた新装備セットの部品です。ディテールが素晴らしい部品です。こだわりポイントとして、発射管防盾の左舷前方裾の張り出しを追加再現しています。
■「高波」の煙突の識別線について
「アジア歴史資料センター」にてWeb上に公開されている、Ref.C08030098800「昭和17年11月1日~昭和17年11月15日 第2水雷戦隊戦時日誌戦闘詳報(防衛省防衛研究所)」内の艦隊区分表ページによりますと、昭和17年11月時においての「高波」の所属は、「第二艦隊第二水雷戦隊第三十一駆逐隊第一小隊」で、第三十一駆逐隊の司令駆逐艦でありました。
以下は上記サイト公開資料ページの昭和17年11月2Sd艦隊区分表からテキスト化(※1)して引用しています。
(一)11月1日~11月24日
旗艦:五十鈴
【連隊番号:一】
隊番号(一):第十五駆逐隊
〈第一小隊:(1)親潮 (2)黒潮 第二小隊:(3)陽炎 (4)早潮〉
隊番号(三):第二十四駆逐隊
〈第一小隊:(1)海風 (2)江風 第二小隊:(3)涼風(※2)〉
【連隊番号:二】
隊番号(二):第三十一駆逐隊
〈第一小隊:(1)高波 (2)巻波 第二小隊:(3)長波〉
(二)11月25日~11月30日
旗艦:五十鈴
【連隊番号:一】
隊番号(一):第十五駆逐隊
〈第一小隊:(1)親潮 (2)黒潮 第二小隊:(3)陽炎 (4)早潮(※3)〉
隊番号(三):第二十四駆逐隊
〈第一小隊:(1)江風(2)涼風 第二小隊:(3)海風〉
【連隊番号:二】
隊番号(二):第三十一駆逐隊
〈第一小隊:(1)高波 (2)巻波 第二小隊:(3)長波〉
注記:
(※1)原本画像から管理人がテキスト化するにあたり、体裁を整えるため原本に無い括弧書きを追加したり旧字体を新字体に改めています。
(※2)原本画像では、「涼風」の艦名が「凉風」となっています。
(※3)「早潮」は既に11月24日に戦没していますが、艦隊区分表ではそのままです。
第二艦隊第二水雷戦隊所属の駆逐艦は当時、一番煙突に太い白線を一本、二番煙突に所属駆逐隊の席次(隊番号)に応じた白線を巻いていたようです。
今回の「高波」の模型では、第三十一駆逐隊所属であることから、一番煙突に白線を一本、二番煙突に白線を二本巻いた仕様にしています。
また、同一駆逐隊内での序列(艦番号)を示す目印として、駆逐隊席次を示す白線を巻いた煙突(二番煙突)とは違うほうの煙突(一番煙突)に、「白塗りの○△□」を描き入れていたようです。昭和18年4月の「巻波」の写真で△の記号が確認できます。記号の大きさはおよそ80cmですので、1/700では1mm強になります。
一番艦:記号なし
二番艦:○
三番艦:△
四番艦:□
よって、司令駆逐艦(一番艦)の「高波」は記号なしとしております。当時の「巻波」は一番煙突に○、「長波」は△が描かれていたものと推測できます。
ただし、あくまでも残されている書類資料から推測したものですので、実際に100%このようであった、とは限らないようです。
当時最前線で輸送や護衛任務に酷使されていた駆逐艦は、作戦行動中の損傷や臨時の所属変更などで艦番号の序列が頻繁に入れ替わる場合があったようで、煙突の識別線や記号をそのつど塗り直していたかどうか、特定可能な写真がない限り、何ともいえないところではあります。